どうもきな臭い「無防備都市宣言」「無防備マン」

まんが『無防備マン』が行く!平和を積極的につくる方法

無防備マン及び無防備都市宣言が如何なるものかということについては、該当のページの漫画を読んでいただきたい。「中学生にでもわかる」と銘打ってあるように、すぐに読めるし、そこで自分なりの印象を固めた上で以下に進んでください。


私が最初に一読したときと同じような違和感を感じたことと思う。後述するが、無防備マンの言ってることはおかしい。

そりゃ"平和"であることは誰もが望むことだ。その手段として「無防備都市宣言をすること」をこの人たちは提唱しているわけだが、この手段は到底受け入れられたものではない。

幾つか疑問点を挙げていく。

無防備マンが曰く「無防備宣言が平和をもたらす」という根拠の薄さ

タロウくんの
無防備地域宣言をしたからって本当に大丈夫なんですか?」
「こっちが戦争をしたくなくてももし攻めてきたらどうするんですか?」

との問いに対し
「確かにそう思うのもわかるよ。だけどこうも考えられるんじゃないかな?」
「もし攻める側が、この無防備地域宣言をしている地域としていない地域ならどっちを攻撃すると思う?」
「わざわざ無防備地域宣言をしている地域を選んで攻撃するとは考えられないだろう」
「第一、逆に防備していたら攻撃されないなんていえるのかい?」

と話題をさりげなくすり替え。タロウくんの「大丈夫なのか?攻撃されたらどうするんだ?」という質問には全く答えていない。
無防備マンはさらに続ける。
「それどころか今まで軍隊や武器などの軍備があったから戦争の歴史が築かれてきている」
要するに軍備があるから相手の軍事力を弱めるために敵は攻撃して戦争になるんだ

との、わけのわからない論理。

無防備マン…歴史的にみて、戦争が、領土の拡大や資源、労働力などを得る為に起こってきたという観点が全く欠落していないか?侵略しようとするような相手にとってみれば、敵陣のなかに何の反撃も無いことが確実である地域があるなんて、戦力上の意味でもでも戦略上の意味でもおいしい話だ。相手にとってみれば、敵領土の一部を無条件で自軍の拠点にでき、そこから他の地域に攻め進められるんだから、こんなおいしい話は無い。

無防備地域が敵国に占領されたら、当然自国軍(この場合自衛隊)による奪還攻撃の対象になる。要するに、無防備地域が真っ先に火の海になるんじゃなかろうか。

外患援助罪にあたるのでは?

この無防備都市宣言をするには

  1. すべての戦闘員や移動兵器、移動軍用施設が撤去されている
  2. 固定された軍用施設や営造物が敵対目的に使われていない
  3. 当局や住民による敵対行為がない
  4. 軍事行動を支援する活動がない

と、4つの条件が必要。要は自衛隊は入れないし、住民は、攻撃にくる相手に「敵対」してもいけないということだ。
この無防備都市を広げようという活動に対して、外患援助罪にあたるのではないかという指摘がある。

Irregular Expression: 無防備地域宣言運動家は外患援助罪で逮捕しろ

敵国が侵略してきたら、自衛隊に協力せず無抵抗で敵国軍隊に占領させて日本の領土や資源を差し出すなんて運動はどう見ても外患援助罪の第87条か88条に抵触するだろ、これ。
第八十二条   【 外患援助 】
日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。
第八十七条   【 未遂罪 】
第八十一条及び第八十二条の罪の未遂は、罰する。
第八十八条   【 予備及び陰謀 】
第八十一条又は第八十二条の罪の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

市民グループ」のあやしさ

市民グループの活動に対して、以下のような報道があった

無防備都市条例:請求代表者、必要性を訴える−−大津市議会 /滋賀:MSN毎日インタラクティブ
 大津市議会は9日、本会議を開き、「市平和・無防備都市条例」を直接請求した市民グループの請求代表者4人が意見陳述し、条例の必要性を訴えた。

 市民グループ無防備地域宣言をめざす大津市民の会」の中川哲也事務局長は、目片信市長が条例について「防衛は国において行われるべき」などとして反対意見を付けて提案したことに対し、「ジュネーブ条約第一追加議定書は紛争当事国の適当な当局が無防備地域宣言できると規定しており、国家に限定はしていない。地域住民の安全に責任を持つ自治体が宣言を行えば政府と自衛隊はそれを認め同意しなければならない」などと述べ、条例への理解を求めた。

 条例案は議会総務委員会に付託され、審議される。【高田房二郎】

毎日新聞 2005年12月10日

この"市民グループ"の青字部分の主張が、赤十字国際委員会ジュネーブ条約に関する補足説明と真っ向から対立するものだとの指摘がある。

A day in the life of Nagoya: 無防備地域宣言に関する嘘をばら撒くのはいい加減にして欲しい

宣言内容を保証することができる権威が原則として宣言を発する必要があります。一般にこれは「政府」自身になるでしょう、しかし、(政府が宣言を発する事が)困難な状況では、宣言は地方の軍司令官、あるいは地元の市長、あるいは長官のような市の当局者からも発せられる場合もあります。もちろん、宣言が地方の市当局から発せられる場合、それは宣言の内容を保証する手段を単独で持っている軍当局との全面的な合意の中で発せられる必要があります

(BLOG管理者注:対訳は機械翻訳をBLOG管理者が整形したものです。誤訳等あればご指摘ください)


「紛争当事国の適当な当局が無防備地域宣言できると規定しており、国家に限定はしていない。地域住民の安全に責任を持つ自治体が宣言を行えば政府と自衛隊はそれを認め同意しなければならない」との主張は少なくとも国際赤十字の補足説明に照らすと真逆であり真っ赤な嘘だということです。

市民グループ無防備地域宣言をめざす大津市民の会」はこうやって素人がネットで検索して知りうる情報すら知らないか、あるいは説得する相手はどうせバカだからそんな細かい事は知らないだろうとタカをくくって都合の悪い部分を黙っているか、どちらかに違いありません。

赤十字コメンタリーと無防備地域宣言との関係についてはここでも解説されている

実際に上記のような理由で法廷で12月22日に否決された。

無防備地域宣言:条例制定案を否決−−大津市議会閉会 /滋賀
 大津市が戦争時に攻撃を受けない「無防備地域」宣言を行う条例案について、同市議会は22日、賛成少数で否決した。市民グループが法定要件を上回る有権者の署名簿を添え直接請求していたが、市は「宣言は防衛を所管する国が行うもの」などの反対意見をつけ提案していた。
(後略)【高田房二郎】

毎日新聞 2005年12月23日

理想と現実

理論上は彼らの言うように、地球上から武器がなくなれば戦争は無くなる。しかし、その遠すぎるゴールまでの道のりが、あまりにも適当すぎやしないか?こんなチラシをまいて署名を集めて条例化しようとしているようだが、運動や署名に賛同している人達は、自分の住む町が無条件占領される可能性を認めているということを理解しているんだろうか?

「平和」「戦争に協力しない」「非暴力」と言われると、聞こえもいいし、『反対する=戦争賛美者』のようにとられそうだが、そこで一歩立ち止まって相手の言っていることが何を意味するのかを咀嚼する癖をつけたいものだ